バランス・スコアカード誕生の背景

1980年代、米国では、財務に偏りすぎた短期的な志向の経営が中心となり、経済全体の活力を失いつつありました。その主な理由は、米国流の株主中心主義にあると考えられていました。つまり、株主配当や株価の向上を目標として、短期の利益を追求するあまり人材の育成や設備投資を控えることで、長期的な成長の視点が軽視された結果です。

そこで、1990年、情報化社会に適合した新たな業績評価システムを検討するため、米国コンサルタント会社KPMGのリサーチ部門であるノーラン・ノートン研究所で行われた研究プロジェクトがバランス・スコアカードの起源と言われています。

この研究に参加した米ハーバード大学のロバート・S・キャプラン(Robert S. Kaplan )教授は、経営コンサルタントのデビッド・P・ノートン(David P. Norton )博士とともに研究成果をまとめ、1992年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌上に発表しました。これにより、バランス・スコアカードが広く世間に知られるようになりました。

 この研究は、従来の短期的な財務的業績指標に偏った業績管理の限界を打破すべく、広い範囲の評価基準を策定し、そこから顧客の満足度や従業員のやる気など、評価の難しい無形資産の価値を明確化することを目指しました。そこで財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標を併用することによって、企業の将来、現在、過去の活動が適正かどうかを判断するというのが基本の考え方になっています。
(書籍:「小さな会社にもできる!バランス・スコアカードの創り方」より抜粋)